真夏の悪魔のおさそい。

悪魔。それは心の中にいる。

 

   ポエマー:はたりょう

 

 

 

「やばい。。レポートが、、、終わらん。。」

2Qが終わろうとしていた日、俺は電車でパソコンとにらめっこしていた。。。。

 

「にらめっこしましょ。笑うと負けよ。あっぷっぷ。」

もちろん、パソコンは俺に笑いかけるはずもない。あっぷっぷなのは、レポートの提出期限だ。提出期限、あっぷあっぷだ。

 

「にらめっこしましょ。レポートやれよ。あっぷっぷ。」

俺の頭には、変顔をした悪魔が登場し、レポートやれよ、と俺をせかす。そいつは砂時計を逆さまにむけた。俺は自ら作り出した悪魔にせかされながら、レポート提出期限と格闘を繰り広げるのだ!

 

―――――

 

なんてな。こんな妄想は時間の無駄だ。なにが悪魔やねん。笑ってしまうわ。ははは。

ちょっと疲れすぎたのかもしれない。

 

そう思い、ひと時の休憩を取ろうとパソコンから目を離した、その時だった。。。

あんなものを見てしまったのは。。。

衝撃映像が俺の視界を埋め尽くす。。

まさか。まさか、ありえない。そんなはずはない。こんな天変地異が起こるわけがない。だってここは、神聖なる電車内なのだから。。。

 

 

 

つゅん、つゅん。

 

つゅん、つゅん。

 

 


 

俺の前の座席で、男女がつきあっておる。あえて、「付き合って」と漢字にしていないのは、想像してくれ。本当につきあっていたのだ。物理的に。指でほっぺたを。

 

 

つゅん、つゅん。

 

つゅん、つゅん。

 

 

おいおい、そんなに激しくつんつんするんじゃない。ここは電車だぞよ。つんつんごっこをするんじゃない。

 

 

つゅん、つゅん。

 

つゅん、つゅん。

 

 

やばいやばい。これは見たあかんやつや。お母さんが子どもに対して「見ちゃダメ」っていうあのやつや。

 

 

つゅん、つゅん。

 

つゅん、つゅん。

 

 

俺の頭の中で眠っていた悪魔が目を覚まし、口をポカーンと開けて、奴らを見始めた。

 

 

つゅん、つゅん。

 

つゅん、つゅん。

 

 

(悪魔)おい俺!あかんやつは見るな。よそはよそ。うちはうちや。あのつんつんは魔力を秘めた行為やぞ。つんつん魔法の書で禁じられた行為や。俺の集中力が奪われるぞ、気をつけろ。ほんで俺はレポートに追われてるんやろ。さっさ、レポートやらんかい。

 

悪魔がこんな良い奴だなんて。そうだった。俺にはやるべきことがある。俺もつんつんしなければならない相手が目の前にいるのだ。

待たせたな、目の前のパソコンよ。よろしく。

俺は目の前のキーボードをつんつんし、レポート課題に取り組み始めた。複数の指でキーボードを連続つんつん。やつらのつんつんに負けじと、こちらも火花を散らしながらつんつん。文字の羅列が勢いよく画面のスクリーンに表示される。ははは。どうだ悪魔。お前の言うたとおり、レポートがはかどっておるぞ。わははは。

 

 

その後も俺は、ものすごいスピードでキーボードをつんつん連打した。まるで映画のスタッフロール。何行にもわたる文章が書き出されていく。そうだ。提出期限まであと少ししかないのだ!おおおー。。。。

 


しかし、レポートを進めていく俺の心には、ある疑問が思い浮んでいく。青空よりもきれいな俺の心に、不安の乱層雲が広がっていく。

 

レポートが終わったとして、俺に充実した夏休みは来るのか?俺の心は、梅雨が明けないんじゃないのか?

まさか、今年の夏も…俺の大学生活が…充実しない…のか。。。

俺の夏休みは映画にもならぬ平凡な毎日なのか。。。

 

 

(悪魔)おいおい。さっさレポートやらんかいな。さっきから何を言うてんねん。なにが「映画にもならぬ」や。古典の授業か。そんな話し方するんやったら、おぬしに、一句たてまつったるわ。

 

 

春すぎて  夏と思った  俺だった

 

   つんつんみせられ   一人かもねん

 

 

―――――

 

(悪魔)いいぞ。もうちょいでレポートが終わるぞ。このレポートが終われば、お前は夏休みや!安心せい。今年こそお前に夏が来るんや、充実した夏休みがな。

知らんけど。

まあ海に行って、花火でもして。ほんで心まで熱い夏を送ってくれ。。。。

 

ほいでな、、、、こっからが重要な話やねん。

このレポートが終わたとき。そん時な、俺はお前と、さようならやねん。俺はお前と会えんくなる。お前がレポートを終えたとき、俺は煙となってお前の頭から「ポンっ」と消えるんや。悪魔の命なんかはかないもんやで。

 

つんつん事件後、俺と悪魔はすっかり仲良くなっていた。

 

そして、悪魔との別れが近づいている。そのことを寂しく感じ始めた。悪魔と一緒に過ごした時間が恋しい。レポートをせかす悪魔とのやり取り。それはなんやかんや楽しいひと時だった。もうすぐレポートが終わる。悪魔とお別れなのだ。

 

ああ。悪魔よ。俺はこのレポートに取り組む時間が、いつまでも続いてほしいとさえ思うよ。

ああ。悪魔よ。もうレポートが終わるみたいだ。

ああ。悪魔よ。もうお別れだ。

 

(悪魔)俺よ。現実はそんな悪くないねんぞ。現実はユーモアであふれてるねん。今、寂しがるお前に、一言だけ伝えといたる。辛くなったらこの言葉を思いせばええ。これほど的確に、説明した言葉はあらへん。現実に戻されるお前の状況はまさしく、

 

 

「ああ、くまったなー。」。。。

 


 

そう言うと、悪魔は俺の頭から「ポンっ」と煙を立てて消えた。こんなしょーもないダジャレを添えやがって。まあ、それもそのはずである。あ く ま で、この悪魔は俺がつくりだしたのだから。わははは。

 

【解説】

皆さんの心の中にも悪魔はいます。その悪魔が善良なのか、あるいは悪徳なのかはともかく、もう一人の自分ってやつが心にいるんですね。そいつは自分を監視し、時には自分をさぼらせ、時には自分を鼓舞するんです。心理学ではメタ認知なんて言われたりもしますね。

レポートが終わらない。部活のやる気が出ない。人間ですから、そんな時もあるでしょう。そんな時こそ、もう一人の自分を呼び覚まさしてはいかがでしょうか。自分で自分を見つめ直す力は、ある意味で悪魔的な力ですからね。おそらく人間にしかできない能力です。

 

 


P.S.

さてさて、僕の中の悪魔はこんなこと言うてましたね。「心まで熱い夏を送ってくれ」と。皆さん、今日は何日ですか?熱い夏の時期じゃありませんか?・・・

暑いじゃなく、熱い夏の時期じゃありませんか...

 

 

 

 

そう!そうなんだぜ。始まったんだぜ、我らが熱い夏休みが!!

 

あなたの夏はユーモアで溢れていますか?ん?ユーモアで溢れていない?何をおっしゃるか。現実はユーモアで溢れているんです。ぜひとも今年の夏は、笑い溢れる夏にしようじゃありませんか!人生で最高の夏にしようじゃありませんか!海に行こうか。それとも山に行こうか。はたまた、部活に熱中しようじゃありませんか!

 

 

みなさんの夏に1つアドバイスを。夏は勢いが大事ですよ。皆さんの心にエンジンは点火していますか。エンジンに点火していないと、線香花火にすら火をつけられませんよ。

 

 

さあ、俺たちの夏が始まった!万世不朽の夏や!充実させるでい!

いざ、夏休みに向かって出陣じゃい!

 

次はかわいい後輩ちゃん。彼はちょうど3ヶ月前に公園で円満に…。彼の目の前に恋の悪魔は現れているのだろうか。。。